3年間の専攻医研修によって専門医認定機構の定める救急科専門医資格を取得できます
当施設は救命救急センターに先行する東京都救急医療センターとして昭和50年に日本医大、東邦大と共に先駆的に指定を受けた3病院の一つであり、都内3次救急医療施設の中でも最も古い歴史を有します。救命救急センター指定が全国で284施設にまで拡大された現在においても当施設の3次救急搬送収容数は常に年間1,000例を超え、救命救急センターとして常に安定した診療実績を示し、「地域救急医療の最後の砦」としての使命を担っています。当科は救急診療を通してこれまでも毎年救急科専門医を送り出してきましたが、新制度における専攻医研修に当たっては大学施設の雄たる日本医科大学高度救命救急センターと施設間相互連携関係を維持する他、日本医大千葉北総病院などの有力施設とも相互連携関係を深化させて、ローテートによって各施設で特色ある研修内容・経験を習得できるよう考慮します。また当院も地域責任としての救急センター(ER)として3次救急に留まらず1次、2次救急医療診療の充実に努めており、これを含む専門研修によって救命救急に限定されない救急診療全般に亘る幅広い臨床経験を提供します。
当科診療は救急専従医による救命救急と重症者集中治療をもっぱらその主体とし、併せて院内急変やRRS (Rapid Response System)事象への主体的対応を果たすことによって病院全体の医療安全水準も担保しています。現救命救急センターは平成18年に新増築され、200m2に及ぶ広大な救命初療室、専用のMDCT、計30床のICU・HCUなど現行設置基準を満たす十分な設備水準を有し、救急センター全体では占有面積3,000m2を展開します。さらに新病棟建築計画が進行中であり、救急センターも全面的に拡張刷新されることとなっています。
武蔵野赤十字病院は30診療科、611床を有する総合病院であり地域の中核臨床病院です。病院としてDPC類別2群に位置付けられた、特定機能病院に準じる高度急性期病院ですが(全国140施設)、臨床病院の特性として大学病院等と比べて各診療他科との関係が緊密で円滑なため、スムーズな専門科診療協力が得られています。我々の救急症例についても各科との合同検討会がほぼ毎日開催されています。これらの良好な関係に立って救急科専門医資格要件を満たしつつ、その過程において一定期間、診療他科の診療研修を受けることも柔軟に考慮できます。さらに地域医療に責任を果たすものとして杏林大学、多摩総合医療センター、国立病院災害医療センターなど近隣の救急医療施設とも広く協力関係を保ち、診療の協力や症例検討会などを介してネットワーク関係にあります。救急施設として消防機関(東京消防庁)ともさまざまに連携し、MC(Medical Control)に関わっています。
また当院は初期臨床研修先として従来から高い評価を得ており、また新研修医制度においてもこれを維持しています。このため全国から採用される初期研修医の質は高いと言えます。病院の診療や研修教育の質を表現することは難しいことですが、病床数611床に対して常勤医師数234名という潤沢な医師数一つをとっても、病院の診療と研修への積極的姿勢を示せると思われます。もちろん研修病院であるからには研修・教育は重点目標であり、その帰結としての研究、すなわち「高度な医学の追求medical science」も重視されますが、医療機関としての病院の使命はあくまで「安心・安全で質の高い医療の実践medical practice」に尽き、それが最終的に研修の質を支えるものと考えています。いかなる理由であっても患者さんに不利益なことは認められません。より良い医療を、自分自身や家族が受けたい医療提供を追求しましょう。
当施設は新宿・渋谷など都心に至近ながら落ち着いた東京山の手に位置し、生活環境が整って便利で治安も良いため、勤務居住地としてごく好立地と言われます。周辺に緑地も多く教育環境も高水準です。都内エリアで人気随一の吉祥寺は、同じ武蔵野市です。病院は中央線武蔵境駅から徒歩圏内と交通至便にあるため通勤の負担も少なく、都内での研究会、学会などの参加に利便性の良い位置にあります。職住隣接しながら大都市機能の利便さも享受できる場所は、都内でも多くはありません。また武蔵野市の市域は地盤も安定し、諸災害に対して強靭で安全と考えられます。
日本赤十字社は140年の歴史を有し従事者5万人、事業規模年間1兆円に及ぶ本邦最大規模の医療事業体です(日本赤十字社法に基づく特殊認可法人)。このため運営・組織は盤石で、福利厚生は事業規模に伴って手厚く充実しています。医師賠償責任保険は病院側(日赤本社契約)で加入しています。採用された後期研修医は日赤常勤嘱託医として身分は安定的に確保され、在勤中は社内規定に基づく待遇が保証されます(院外アルバイト勤務は一切ありません)。生活に追われ家庭生活を蔑ろにしては、よい診療も研修も出来るはずがありません。仕事は真剣に、でもLife-work balanceは高く維持されねばなりません。
社会医療活動は日赤病院の存在意義でもあります。赤十字標章Red Crossは命の拠り所としての世界共通のシンボルであり、わが国では日赤以外が使用することはできません。災害救護はこの中心的活動であり、日赤組織と病院を挙げて一丸で取り組みますが、救急科は特に急性期・初動対応において実質的にその中核、即応チームとなることが当然のことと期待され、かつ私どもはその負託に応えています。救急科はこれまでも実災害やマスギャザリングなどの災害医療救護活動に参加の実績を重ね、内外の地域訓練・計画にも常に主体的に関わってきました。日本、東京、日赤の各DMAT指定機関であり、訓練機会によって隊員資格はもちろん、災害救護能力についての指導者資格取得が得られます。なお日赤職員は、災害実出動時にはその活動に対して法と規則に基づく十分な補償が付与されています。もちろんいかなる場合でも自発意志が尊重され、本人の意向に反して命令によって現場等へ派遣されることはありません。
救急医療には喜びも悔しさも、緊張感も安堵感も、達成感もやるせなさもありますが、自らの判断と行為に直ちに手応えがあり、「命を救う」重みを感じることができます。身を賭するに値し、医師としての矜持を満たす職務です。武蔵野赤十字病院救命救急センターで熱い想いを共にしませんか。
武蔵野赤十字病院 http://www.musashino.jrc.or.jp
救命救急センター長 須崎紳一郎 ssuzaki@musashino.jrc.or.jp
この武蔵野赤十字病院救急科専門研修プログラム(以下、本研修プログラムと略します)は、プログラムを構成する施設病院群が提供する豊富な指導医と症例数、そして高度な医療の実績のもとに、広い知識と高い技能を習得し、リサーチマインドを持って本邦における救急医学の進歩を推進しつつ、救急医療の臨床現場においてその主導的な役割を果たしうる有能な人材(救急科専門医)を養成するものです。
本研修プログラムでは武蔵野赤十字病院救命救急センターを基幹研修施設として、首都圏の多彩な特徴を有する連携医療施設、地域協力施設のそれぞれが緊密に協力しつつ、病院前治療、救急初寮室(ER)での対処対応、そして手術室や集中治療室(ICU)での根本治療を主体として総合的に研修します。この過程の中で傷病の種類によらないあらゆる重症度や緊急度が高い患者への適切な評価と判断力、そして手術室での根本治療やICUでの集学的集中治療など、救急科専門医として必要な知識と手技・技術、望ましい態度が十分に指導されるよう考慮しています。また、東京消防庁や地域の救急隊と共同で病院前救護や救急医療システム向上を目指し、メディカルコントロール(MC)にも積極的に関わり、さらに災害医療への理解と技能、経験も得られるものとします。
救急医療は「いつでも」、「どこでも」、「だれでも」が受けられる“医”の原点であり,かつ全ての国民が生命保持の最終的な拠り所としている根源的な医療と位置付けられ(平成9年12月,厚生省健康政策局:救急医療基本問題検討会報告書)、その救急医療を担う中核となるのが救急科専門医です。このため本研修プログラムは「救急患者に良質で安心な標準的医療を提供」し、かつ「災害医療を含めた地域救急医療体制の理解と貢献」できる救急科専門医を養成するものです。
本研修プログラムにおいて救急科専攻医は、急病や外傷の種類や重症度に応じた総合的判断と治療のための知識と技能を習得します。すなわち、急病で複数臓器の機能が急速に重篤化する場合、あるいは外傷や中毒など外因性疾患の場合は、初期治療から継続して根本治療や集中治療において中心的役割を担うことが可能となります。また、必要に応じて他科専門医と連携し、迅速かつ安全に急性期患者の診断と治療を進めるためのコンピテンシーを修得することが可能です。院内急変対応を通して医療安全も担保します。さらに、地域の救急医療体制、特に救急搬送(プレホスピタル)を担う救急隊、行政、そして地域の医師と連携して構築する地域の救急医療、MC体制に関与します。災害時には主導的に対応し、地域全体の救急災害医療の責任を負います。本研修プログラムの修了により、かかる社会的責務を果たすことができる専門医資格が得られます。
救急科専門医の責務は、医の倫理に基づき、多様な救急患者、すなわち脳卒中、心血管疾患、消化器疾患などの内因性救急疾患や外傷、中毒などの外因性救急疾患など疾病の種類に関わらず、救急搬送された患者に円滑に初期診療を開始し、必要に応じて適切な診療科の専門医と連携して、迅速かつ安全に診断・治療を進めることにあります。さらに、救急搬送および病院連携の維持・発展に関与することにより、地域全体の救急医療の安全確保の中核を担います。さらに多彩な連携医療施設と地域医療施設の研修、大学院との交流、学会活動等から知識と技能だけではなく、リサーチマインドの習得を目指します。最終的に本邦における救急医学、救急医療の中心的な役割を果たす高度な人材の養成が本研修プログラムの使命です。
専攻医は本研修プログラムによる専門研修により、以下の能力を備えることを到達目標とします。
専攻医は以下の3つの学習方法で専門研修を行います。
日常診療の現場で、豊富で経験のある指導医が中心となり救急科専門医や他領域の専門医とも協働して、専攻医に広く臨床現場での研修を提供します。
国内外の標準的治療および先進的・研究的治療を学習するために、救急医学に関連する学術集会(日本救急医学会総会、同地方会、日本臨床救急医学会、日本外傷学会、日本集中治療医学会、日本中毒学会など)、セミナー、講演会への参加を奨励し、配慮します。またJATEC、JPTEC、ICLS(AHA/ACLS を含む)などのoff-the-job trainingコースの履修や内外災害訓練の参加・指導に参画できるよう優先します。
また、研修施設もしくは日本救急医学会やその関連学会が開催する認定された法制・倫理・安全に関する講習に参加する機会を保証します。
専門研修期間中の疾患や病態の経験値の不足を補うために、あるいは自己研鑽のため、日本救急医学会やその関連学会が準備する「救急診療指針」、e-Learning などを活用した学習を病院内や自宅で利用できる機会を提供します。
本研修プログラムでは、制度の定める研修水準を十分に満たした上で、各専攻医の方々一人一人の希望を可及的に考慮し、基幹施設や連携施設での研修スケジュールを設定することとします。
また本研修プログラムによる救急科専門医取得後には、サブスペシャルティ領域である「集中治療医学領域専門研修プログラム」に進むことが可能です。連携研修施設のほとんどが集中治療医学会専門医研修施設となっており、研修期間に算入できます。その他のサブスペシャルティに関しても、それぞれのプログラムが整備され次第、不利益なく移行できます。
さらに、救急科専門医に加えて他の基本領域専門医、例えば外科、脳神経外科、整形外科等の専門医取得を目指している場合には、本人の意向を尊重し、それらのプログラムに進むことも支援します。
基本モジュールごとの研修期間は、救命救急センターでの研修を基本とした重症救急症例の診療、すなわち病院前診療、初期診療、外科的治療を含む根本治療、その後の集中治療(クリティカルケア)などでの計18ヵ月以上、そして地域における救急患者の初療を担当(ER 診療部門も含む)6 ヵ月以上の研修を核としますが、これらに加え希望に応じて、初期臨床研修における研修領域、あるいは外科、脳神経外科、整形外科、総合診療科、感染症科などの研修を3 ヵ月以上選択することも可能です。これら各科や地域病院で研修する期間も専門医プログラム期間に当然算入します。また施設と環境によって、ドクターカーやドクターヘリ研修が行えるよう配慮します。
本研修プログラムは、研修施設要件を満たした下記の病院群によって行います。
医療機関名 | 研修部門 | 所在地 | ||
---|---|---|---|---|
A | 基幹研修施設 | 武蔵野赤十字病院 | 救命救急センター | 東京都 |
B | 連携研修施設 | 日本医科大学付属病院 | 高度救命救急センター | 東京都 |
C | 連携研修施設 | 日本医科大学武蔵小杉病院 | 救命救急センター | 神奈川県 |
D | 連携研修施設 | 日本医科大学千葉北総病院 | 救命救急センター | 千葉県 |
E | 連携研修施設 | 国立病院機構災害医療センター | 救命救急センター | 東京都 |
F | 連携研修施設 | 山梨県立中央病院 | 救命救急センター | 山梨県 |
G | 連携研修施設 | 日本赤十字社医療センター | 救命救急センター | 東京都 |
H | 連携研修施設 | 横浜市立大学附属市民総合医療センター | 高度救命救急センター | 神奈川県 |
I | 連携研修施設 | 産業医科大学病院 | 救急部 | 福岡県 |
J | 連携研修施設 | 日本医科大学多摩永山病院 | 救命救急センター | 東京都 |
K | 連携研修施設 | 南多摩病院 | 救急部 | 東京都 |
L | 連携研修施設 | 東京警察病院 | 救急部 | 東京都 |
本プログラムは武蔵野赤十字病院救命救急センターをプログラム主幹としての基幹研修施設とし、日本医科大学を中心とした連携病院群で構成されています。日本医科大学付属病院高度救命救急センター以下横浜市立大学病院までの8病院は本プログラム上の連携研修施設ですが、いずれも救急科専門医基幹研修施設でもあり(いわゆる相互たすきがけ連携関係)、多数の症例と指導医を有する首都圏でも屈指の有力病院群を構成します。
これら病院群では救命救急や集中治療における基本スタンスを共有し、診療能力には遜色は全くありませんが、立地環境や地域背景、病院態勢、患者対象などに当然ながら違いがあり、このためローテーションプログラムによって多彩でより幅広い研修機会を提供できるものと考えられます。たとえばドクターヘリ活動についてはD.千葉北総病院、F.山梨県立中央病院が、ドクターカー病院前診療についてはこれらのほかB.日医大付属病院、E.災害医療センター、J.多摩永山病院などでも研修できますし、とくに外傷診療についてはB. 日医大付属病院、D.千葉北総病院、E.災害医療センターなどで豊富な症例に接することができるでしょう。災害医療体制についてはどこの施設も態勢(災害拠点病院)をとっていますが、A.当院やG.日赤医療センターにおいては日本赤十字社の常設救護体制に組み入れられますし、E.災害医療センターも国の災害基幹施設としての機能を発揮しています。地域医療については、それぞれがER体制をとることによって救命救急センターとは別の初期、二次救急の診療機会が得られますが、特にJ.南多摩病院、L.東京警察病院を経験することになれば地域に密着した救急診療を十分に体得することができるでしょう。一方でH.横浜市立大学病院やI.産業医科大学病院を経験すれば、別の指導者のもとで視点の違った診療にも接します。
これら病院群はプログラム責任者間で相互に密接な連絡をとり、あるいは症例検討会や交流の場を設けることで、専攻医の症例、経験量の偏りや診療方針の齟齬などが生じないよう、慎重な配慮を払います。個々の専攻医の実際のローテーションプログラムについては、プログラム参画施設が専攻医募集予定数より多いために、あくまで一例としか例示できませんが、各専攻医の希望や事情、将来目標などを尊重して、個別柔軟に(オーダーメイドに)計画することとします。またローテーション中も随時見直します。
プログラム基幹施設である当院と共に、各連携施設の研修内容、施設状況、週間予定などの概略を以下に示しますが、先に述べたようにそのほとんどが基幹研修施設ですので、より詳細には各施設の研修プログラムを参照されるのがよいでしょう。
日本医科大学多摩永山病院救命救急センターは大学付属病院であり、また、地域の中核病院として位置付けられています。9名が救急科専門医で、このうち、脳神経外科専門医・同指導医、外科専門医、脳血管内治療専門医、集中治療専門医、熱傷専門医、中毒のクリニカルトキシコロジスト等のダブルボード以上を持っている指導医が複数名おり、また、整形外科医もおります。現在、急性期外科については、心臓血管・呼吸器以外は救急医が自己完結的に対応可能なっており、従って、希望があれば基本的な各外科手技の指導を受けることが可能です。脳卒中の軽症例の一部と重症例も担当しており、脳血管内治療も行っております。また、ドクターカーの運用にも力を入れております。1日1~5件の出動があり、これをもとに、毎月、多職種で事例検討とシミュレーション教育を行っております。
南多摩病院は「断らない二次救急医療」をモットーにしている病床数170床の東京都指定二次救急病院であり、2015年の救急車受入台数は4,310台、ウォークインの救急患者数は7,543名でした。八王子市医師会事業として、在宅または施設入所中の高齢救急患者搬送にも力を入れています。益子邦洋院長は前日本医科大学千葉北総病院救命救急センター教授であり、ドクターヘリ初めわが国の病院前診療の充実と外傷集中治療に多大な貢献と経験を有した日本救急医学会指導医、専門医です。
東京警察病院は415床を有する中野区の中核病院です。また災害拠点病院として、DMATを一隊、病院屋上に大型のヘリコプターが発着できるヘリポートを備えており、災害活動も積極的に行っています。救急センター(救急外来)は、初療室7床(重症対応3床、一般軽症対応4床)と観察室6床を有し、隣に一般撮影室・CT・血管造影室を備え、救急診療専用のスペースとして独立しています。平日昼間帯は救急科医師が中心となっていわゆるER型の救急診療を行い、夜間・休日は当直医が対応しています。2014年度の救急車搬入4,486例、直接来院5,593例、総数10,079例でした。当院の集中治療センター(集中治療室)は8床の病床数を有しています。2014年度の集中治療センター全体の入室は、795例で、平均稼働率は、83.75%でした。救急センターから直接集中治療センターに入室となった重症例は、217例でした。2014年度に集中治療センター内で行われた高度医療は、経皮的心肺補助装置(PCPS)が6例で、各種血液浄化療法では、持続血液濾過透析(CHDF)68回、エンドトキシン吸着療法(PMX)18回、血漿交換療法(PE)4回、透析療法(HD)9回で、その他低体温療法・大動脈内バルーンパンピング(IABP)・体外式ペースメーカーやAPRVなど最新の人工呼吸管理が実施されています。開放型ICUですが、重症例には救急科が中心となって治療にあたっています。日本救急医学会から救急科専門医認定施設と日本集中治療医学会から集中治療専門医研修施設の認定を受けています。救急科は、いわゆるER型救急とICU管理を行うHybrid型救急医療を目指しています。救急で来院するどんな症例にも初期対応できるようになることを目指し、さらに多臓器不全・薬物中毒・原因不明なショック・外科処置が必要な重症感染症など、多診療科にまたがる複雑な疾病にも対応できる救急医を育成します。
救急科研修の構成をモジュールとして示します。基本モジュールごとの研修期間は、重症救急症例の病院前診療・初期診療・集中治療(クリティカルケア)診療部門12か月、ER診療部門9-12か月に加えて、初期臨床研修における研修領域、あるいは希望領域に応じて外科・整形外科・脳外科のいずれかを3か月、麻酔科・循環器内科・小児科・放射線科のいずれかを3か月の合計6か月の他科研修、クリティカルケア診療部門(希望に応じてドクターヘリ研修・特殊災害医療対応施設研修(3か月まで)を含む)またはER診療部門(希望に応じて眼科・耳鼻科・小児科等の他科研修(3か月まで)を含む)を合計6か月としています。例示します。
なお図は説明のために表示したもので、固定ではありません。救急科専攻医は36ヶ月の研修期間全体によって必要な臨床経験を踏み、十分かつ適切な指導が受けられるよう配慮されますが、研修施設のローテーションや研修の順序などは確定、画一的なものではなく、本人の都合や研修施設の人的状況などで変更あるいは調整されます。その場合でも一方的に不利益が生ずることのないよう、また本人の希望が最大限容れられるように努めます。
経験症例等については当該施設、当該期間に限定されるものではありません。各救急施設はそれぞれ重症度を踏まえつつ隔てなく地域救急医療に当たっていますので、経験症例対象には実際は大きな差異はないものと思われます。あくまで概念的に捉えてください。
ドクターヘリなど一部機能を除けば、どこの診療機関に属していても、診療期間に並行してほぼ満遍なく症例診療を得る機会があるとみられます
専攻医は期間中、救急科研修カリキュラムに沿って、上記の表に示されたⅠからⅩⅤまでの領域の専門知識を修得します。研修期間中に必要な症例経験量は十分に担保されています。
専攻医はまた同カリキュラムの求める救命処置、診療手順、診断手技、集中治療手技、外科手技などの専門技能を修得します。
これら専攻医が経験すべき疾患、病態あるいは診察・検査等は、必須項目と努力目標とに区分されて示されています。また手術・手技も術者として、あるいは助手として経験すべき症例数が提示されています。これらの診察・検査や手技等については、本研修プログラムにおける基幹・連携病院群での症例を基に、適切な指導を受けて経験することができるよう、偏りや不利益がないよう配慮されます。
専攻医は基幹および連携病院群において幅広く研修する過程で、地域医療である他医療施設との病診・病々連携、地域包括ケア、在宅医療などを経験します。またこれにより3次救急での重症救急症例ばかりでなく1次救急に始まる幅広い救急初期診療機会が提供されます。また消防組織(東京消防庁ほか)と関係を深めて事後検証委員会や地域におけるメディカルコントロール活動にも参加します。
専門医研修プログラムでは診療実務能力修練と共に、リサーチマインドの涵養、学術活動への参加が強く求められています。このため臨床研究や基礎研究を自ら遂行することを強く奨励します。専攻医は研修期間中に筆頭者として専門医機構研修委員会が認める救急科領域の学会で少なくとも1回の発表を必須とします。また、筆頭者としても少なくとも1編の論文発表が得られるように共著者として指導します。更に、各救急施設が参画している外傷登録や心停止登録などの症例登録事業(DB)に対して対応し、また大規模調査研究に関与協力することも専攻医の研修実績として評価します。
本研修プログラムでは、救急診療や手術での実地修練(on-the-job training)を中心にして広く臨床現場での経験的修練を提供すると同時に、各種カンファレンスなどによる知識・技能の習得の場を提供しています。これらは自らの研修の場であると同時に、初期研修医(武蔵野赤十字病院救命救急センターでは、常時3-5名の1、2年次初期研修医が配属されています)に対して、積極的に指導的立場を発揮することが求められます。
カンファレンスの参加を通して、プレゼンテーション能力を向上し、病態と診断過程を深く理解し、治療計画作成の理論を学びます。またカンファレンスによっては進行に当たるなど指導的立場も要請します。
抄読会や勉強会への参加や文献検索や情報検索の指導により、臨床疫学の知識やEBMに基づいた救急外来における診断能力の向上を図ります。
各研修施設内の設備や教育ビデオなどを利用して、臨床で実施する前に重要な救急手術・処置の技術を修得します。各種off–the-job training courseやシミュレーションラボの資器材を用いたトレーニングにより緊急病態の救命スキルの修得機会を提供します。
救急科領域の専門研修プログラムでは、医師としてのコンピテンスの幅を広げるために、最先端の医学・医療を理解すること及び科学的思考法を体得することを重視しています。本研修プログラムでは、専攻医は研修期間中に以下に示す内容を通じて、学問的姿勢の習得が望まれます。
救急科専門医としての臨床能力(コンピテンシー)には医師としての基本的診療能力(コアコンピテンシー)と救急医としての専門知識・技術の両者があります。コアコンピテンシーはまた医師としての基本能力とも言えるものですので、専攻医は研修期間中に以下のコアコンピテンシーの習得を要求します。
専門研修施設群の各施設は、密接に連携し協力して指導にあたります。各施設に置かれた委員会組織の連携のもとで専攻医の研修状況に関する情報を交換し(概ね年2回)、施設ごとの経験救急症例の偏りを専門研修施設群全体として補完補正します。研修施設群各施設は、年度毎に診療実績を救急科領域研修委員会へ報告します。基幹ないし連携研修施設での研修期間は、全研修期間を通して最低24ヶ月を保証します。
救急科専門医研修プログラムでは地域医療の経験、研修が求められています。武蔵野赤十字病院においても救命救急センターは重症例にほぼ特化した3次救急施設ですが、併せて救急センター(ER態勢)も運営しており、1次2次救急の診療経験を得ることができます。またさらに各連携研修施設で経験される症例対象や疾患は多彩であり、これらを通して総合的に偏りのない幅広い診療経験を提供できるものします。さらに中規模病院での一般救急診療を希望する場合には、救急医療に理解があり救急指導医の常勤する2次救急病院(南多摩病院、東京警察病院)とも提携しています。
地域連携については、メディカルコントロール態勢に参画するほか、地元消防救急隊あるいは地区医師会との症例検討会、交流会の場が提供されます。さらに連携研修先によってはドクターカーやドクターヘリ運用を行っていますので、その機会を生かすことで病院前救急医療にも積極的に関与ができます。
専攻医を対象とした講演会やhands-on-seminarなどの共同開催を進める等、研修基幹施設と連携施設における指導の共有化を考慮します。指導者の定期的な交流や相互視察も予定します。連携先の多くはそれ自身でも基幹研修施設になっていますので、診療と研修の質は十分に担保されるものなっています。
専攻医には本研修プログラムにおいて、研修の期間中に研修カリキュラムに示す疾患・病態、診察・検査、手術・処置の基準数を経験します。別表に示さる習得項目を満たせるよう、研修過程を通して評価されます。
年次毎の研修計画を以下に示します。
クリティカルケア、ER、ICU、病院前救護・災害医療などの経験的技能は年次に拘らず弾力的に研修します。この際、必須項目を中心に、知識・技能の年次毎のコンピテンシーの到達目標(例 A:指導医を手伝える、B:チームの一員として行動できる、C:チームを率いることが出来る)を定めることでバランスをとり、最終評価にも反映させます。また医療の質・安全管理、医事法制、医療倫理などは全期間を通して学び、院内外の講習会への受講を必須とします。
研修施設群の中でのローテーションについては、最終的には指導内容や経験症例数に不足不公平が無いように十分に配慮します。次表に代表的な配属ローテーションの例を提示しますが、実際は研修の順序、期間等については、個々の専攻医の希望と研修進捗状況、各病院の状況、地域の医療体制を考慮し、研修基幹施設の研修プログラム管理委員会が適宜調整しローテーションを決定します。
表:研修施設群ローテーション研修の例
当プログラムでは採用予定人員に対して連携研修病院を潤沢に組織していますので、選択の自由度は高いものと考えられます。施設間の協議によりますが、本人の希望をできるだけ尊重します。
研修状況の形成的評価による評価項目は、コアコンピテンシー項目と救急科領域の専門知識、および技能です。専攻医は、専攻医研修実績フォーマットに指導医のチェックを受け、指導記録フォーマットによるフィードバックで形成的評価を受けます。指導医は臨床研修指導教育ワークショップ、もしくは日本救急医学会等の準備する指導医講習会などで獲得した形成的評価方法で、専攻医に対しフィードバックします。指導医から受けた評価結果を、年度の中間と年度終了直後に研修プログラム管理委員会に提出することとします。研修プログラム管理委員会はこれらの研修実績および評価の記録を保存し総括的評価に活かすとともに、中間報告と年次報告の内容を精査し、次年度の研修指導に反映させます。
専攻医は、研修終了直前に専攻医研修実績フォーマットおよび指導記録フォーマットによる年次毎の評価を加味した総合的な評価を受け、専門的知識、専門的技能、医師として備えるべき態度、社会性、適性等を習得したか判定されます。判定は研修カリキュラムに示された評価項目と評価基準に基づいて行われます。
年次毎の評価は当該研修施設の指導責任者、および研修管理委員会が行います。専門研修期間全体を総括しての評価は専門研修基幹施設の専門研修プログラム統括責任者が行います。
研修基幹施設の研修プログラム管理委員会において、知識、技能、態度それぞれについて評価を行われます。修了判定には専攻医研修実績フォーマットに記載された経験すべき疾患・病態、診察・検査等、手術・処置等の全ての評価項目についての自己評価および指導医等による評価が研修カリキュラムに示す基準を満たす必要があります。
特に態度について、看護師、薬剤師、診療放射線技師、MSW等の多職種のメディカルスタッフによる専攻医の日常臨床の観察を通した評価も加わります。看護師を含んだ2名以上の担当者からの観察記録をもとに、当該研修施設の指導責任者から各年度の中間と終了時に専攻医研修マニュアルに示す項目の形成的評価を受けます。
研修基幹施設は専門研修プログラムを管理し、当該プログラムに参加する専攻医、および専門研修連携施設を統括しています。
専門研修連携施設は専門研修管理委員会を組織し、自施設における専門研修を管理します。また、参加する研修施設群の専門研修基幹施設の研修プログラム管理委員会に担当者を出して、専攻医および専門研修プログラムについての情報提供と情報共有を行います。
救急科領域の専門研修プログラムにおける各研修施設の責任者は、専攻医の適切な労働環境の整備に努めるとともに、心身の健康維持に配慮します。
日本専門医機構の救急科領域研修委員会が定める書式を用いて、専攻医は各年度末に「指導医に対する評価」と「プログラムに対する評価」を研修プログラム統括責任者に提出します。この評価によって専攻医が不利益を被ることはありません。改善の要望は研修プログラム管理委員会に申し立てることができます。さらに研修プログラム管理委員会への不服があれば、専門医機構専門研修プログラム研修施設評価・認定部門に訴えることができます。
救急科領域の専門研修プログラムに対する監査・調査を受け入れて研修プログラムの向上に努めます。
武蔵野赤十字病院は救急科以外に複数の基本領域専門研修プログラムを擁しています(内科、外科、産婦人科、小児科)。病院内の各専門研修プログラム統括責任者および病院管理者(院長もしくは副院長)、事務部門担当責任者からなる専門研修プログラム連絡協議会を院内に設置し、武蔵野赤十字病院における専攻医ならびに専攻医指導医の処遇、専門研修の環境整備等を定期的に協議します。
専攻医や指導医が専攻医指導施設や専門研修プログラムに大きな問題があると考えた場合(パワーハラスメントなどの人権問題も含む)、武蔵野赤十字病院救急科専門研修プログラム管理委員会を介さずに、直接日本専門医機構の救急科研修委員会に訴えることができます。
救急科専門研修プログラムは、日本専門医機構の救急科研修委員会によって、5年毎にプログラムの更新のための審査を受けます。
研修基幹施設の救急科研修プログラム管理委員会において、専門医認定の申請年度(専門研修3年終了時あるいはそれ以後)に、知識・技能・態度に関わる目標の達成度を総括的に評価し、総合的に修了判定を行います。修了判定には専攻医研修実績フォーマットに記載された経験すべき疾患・病態、診察・検査等、手術・処置等の全ての評価項目についての自己評価および指導医等による評価が研修カリキュラムに示す基準を満たす必要があります。
研修基幹施設の研修プログラム管理委員会において、知識、技能、態度それぞれについて評価を行います。専攻医は定められた様式 を専門医認定申請年の 4月末までに専門研修プログラム管理委員会に提出してください。専門研修プログラム管理委員会は5月末までに修了判定を行い、研修証明書を専攻医に送付します(なおこれら手続きについては変更される可能性があります)。
本研修プログラムでの専攻医の受け入れ数は当初は毎年2名を上限とします。専門医機構の定める専攻医数算定式によれば本プログラムでは5名以上の受け入れが可能、すなわち、指導医数、症例数について十分な余裕があります。そのため次年度以降に各施設の指導医数等に多少の変動が生じても、専攻医の資格取得要件に支障が出る虞れはありません。
指導医数、症例数から来る受け入れ上限に対して受け入れ枠を制限している理由は、病院での正規職員採用枠を確保して安定的な正規職員身分を安堵することを優先したためです。少数精鋭となりますが、意欲のある医師の積極的な応募を大いにお待ちします。なお次年度以降において実績と状況により、本プログラムの採用枠が拡大される可能性があります。
サブスペシャルティ領域として予定されている集中治療領域の専門研修については、本研修プログラムにおける専門研修の中のクリティカルケア・重症患者に対する診療によって、集中治療領域の専門研修で経験すべき症例や手技、処置の一部を修得することができます。また研修病院群の多くは集中治療医学会専門医認定施設に指定されているため実績を算定可能であり、集中治療専門医取得のための円滑な支援がなされます。
今後、サブスペシャルティ領域として検討される熱傷専門医、外傷専門医等の専門研修にも連続性を配慮していきます。
救急科領域研修委員会で示される専門研修中の特別な事情への対処を以下に示します。
男女ともに1回までは研修期間として認めます。その際、出産を証明するものの添付が必要です。
6か月まで研修期間として認めます。その際、診断書の添付が必要です。
上記の短期間雇用形態は研修3年間のうち6か月まで認めます。
上記項目1),2),3)に該当する専攻医の方は、その期間を除いた常勤での専攻医研修期間が通算2年半以上必要になります。
大学院へ進学、所属しても十分な救急医療の臨床実績を保証できれば専門研修期間として認めることが可能です。ただし、留学、病棟勤務のない大学院の期間は研修期間として認められません。
外科専門医の取得も希望する専攻医に対しては、1年次の終了時に連携する外科専門研修プログラムに移行して外科専門医研修を1年次から開始することが可能です。外科専門医取得後は、専門医機構救急科領域研修委員会の許可を得て、本プログラムによる救急科専門研修を2年次から再開することができます。なお、脳神経外科あるいは整形外科専門医取得を希望する専攻医にも、外科と同様の方法を考慮しています。
本研修プログラムに記載されている以外の研修の追加は、プログラム統括責任者および専門医機構の救急科領域研修委員会が認めれば可能です。ただし、同期間は救急科研修期間に算入することはできません。
計画的な研修推進、専攻医の研修修了判定、研修プログラムの評価・改善のために、専攻医研修実績フォーマットと指導記録フォーマットへの記載によって、専攻医の研修実績と評価を記録します。これらは基幹施設の研修プログラム管理委員会と連携施設の専門研修管理委員会で蓄積されます。
各年度の中間と終了時に、指導医とともに看護師を含んだ2名以上の他職種も含めた日常診療の観察評価により、専攻医の人間性とプロフェッショナリズムについて、専攻医研修マニュアルに示す項目の形成的評価を受けることになります。
研修プログラムの効果的運用のために、日本専門医機構の救急科領域研修委員会が準備する専攻医研修マニュアル、指導医マニュアル、専攻医研修実績フォーマット、指導記録フォーマットなどを整備します。
本研修プログラムの専攻医採用方法を以下に示します。
専門医認定の申請年度(専門研修3年終了時あるいはそれ以後)に、項目13.に従って目標の達成度を総合的に判定し研修を終了します。なお具体的手続き等については本プログラム作成時点で未定です。